レベッカの裏庭。

本について書く。

2024-11-01から1ヶ月間の記事一覧

「サースキの笛がきこえる」――孤独を感じたらこちらにどうぞ

みんなと違う、というのはやっぱり辛い。「みんな」だとか「普通」だとか、曖昧で正体がわからないものに振り回されるのは情けないな、と思いながらも、それでもやっぱり自分以外の人間が平然とできていることができないとき、情けなさと恐ろしさと悲しさの…

輝かしい一年の思い出「ミーナの行進」

小川洋子の作品にしては珍しく、登場人物たちの名前が出てくる。「K」や「博士」と言った記号ではなく、「朋子」とか「美奈子」とか、はっきりした名前が記されているのだ。 作品の細々したシーンからも小川洋子の子ども時代が伺える。ほかの作品よりも小川…

「丕緒の鳥」から見る世界との向き合い方

わたしは小野不由美の短編集が好きだ。毎回読むたびに好きだなあ、と思うのだけど、最近読み返して好きだなあとしみじみ感じたのは、表題作「丕緒の鳥」と「風信」だった。 どちらも、浮世離れした人たちがどのように現実と向き合っているかを書いた物語であ…

最高のスピンオフ、「炎路を行く者」

上橋さんの守り人シリーズはすべて大好きなのだが、なんといっても本書が一番好きだ。自分で買うまでは、図書館に行って目につく度借りていたので、母に「またそれ?」と笑われていた。 これは、本編では深掘りされないアラユタン・ヒュウゴという男の少年時…

わたしの人生映画「gifted」

大好きな映画である。何度見ても、同じところで、いや、前回よりも多くの箇所で涙を流し、そして毎回温かい気持ちになる。でも、決して都合のいい温かさではなく、少しの痛みを伴う温かさだ。 大筋はこうである。数学の天才少女とその叔父が一緒に暮らしてい…